IGARYUの 役にたつかもしれない備忘録

Apple、仕事、音楽、ライフハックなどのネタを中心に。あなたのお役に立てれば幸いです。

「Finaleユーザーの集い2019」に思う事

f:id:IGARYU:20190317010525j:plain

 

昨日は東京赤坂のOAGホールで開催された「Finaleユーザーの集い2019」に参加した。

www.finalemusic.jp

 

薄々感じていた通り、Finaleの最新版である「Finale version 26」がお披露目となり、会の前半は新機能の説明に重点が置かれた。

www.finalemusic.jp

 

もともとFinaleは出版の用途に耐えうるクオリティの楽譜を制作できるアプリケーションであり、ユーザーは楽譜を作る目的で使用していた。

 

私はFinaleを使用しておよそ20年になるが、その間にパソコンの性能も飛躍的に向上し、Finaleの役割も楽譜作成だけではなく、楽譜の内容を実際に音として鳴らす事も出来るようになった。

 

私見では、ここ10年ほどは楽譜を作成する事よりも音を鳴らす方に重点が置かれ、どちらかといえば私のような「浄書屋」よりは「作曲家」や「DTM愛好家」のためにアプリがバージョンアップされているという印象が強い。

 

とはいいつつ、私はFinaleがバージョンアップされる度に毎回購入している。

そして機能向上の度合いと導入するための手間などを天秤にかけ、「今回のバージョンは業務に導入するに値するか?」という判断を下す。

 

私の記憶ではFinale2000からFinale2012まで毎年バージョンアップがなされたのだが、毎年仕事道具を変えるというのも大変な労力を要するので、その13年間で私が業務で採用したバージョンは5つしかない。

 

これは視点を変えれば、「浄書屋」にとってはFinaleのバージョンアップが必ずしも望んだ方向に向いていないことを意味する。




話を「Finaleユーザーの集い2019」に戻そう。

 

Finale 26 の新機能はここ最近のバージョンアップの中では浄書屋にとっても恩恵は大きいと言えると思う。

www.finalemusic.jp

 

アーティキュレーションの配置はこれまでもある程度ユーザーが設定可能だったが、上声に付く場合と下声に付く場合で設定が変えられなかったり、スラーとの衝突を手動で回避する必要があったりと、出版目的で浄書する場合は細かい修正作業が生じた。

 

その手作業が不要になるというのは、とてつもない恩恵を受けると言って良い。

開発元が発表した情報だけを見れば、すぐにでも業務に導入したいと思う。

 

しかしFinaleはこれまでもリリースの度に細かな不具合が発見され、しばらく経ってからアップデータが提供されるというパターンが定着している。

 

過去一番困ったのは、Finale 25 とmacOS High Sierra の組み合わせで日本語のフォントが文字化けを起こすという問題だ。

www.finalemusic.jp

 

この問題は結局解決されないまま、macOSがバージョンアップすることで逃げ道が出来たという棚ぼた的な結果となった。

 

私もこの問題を知らずにFinale 25 を使用したままmacOS High Sierra にアップグレードしてドツボにハマり、面倒な思いをして、一時 macOS Sierra にダウングレードをした。

(この時ほどTime Machineを有り難く思ったことはない)

 

この辺りの悪戦苦闘については、下記の記事をご覧いただきたい。 

igaryu.hateblo.jp

 

歌詞などのフォントにこだわらないユーザーであれば別に気にする内容ではないかもしれないが、出版業務に携わっている者にとっては大問題である。

 

なぜなら、各出版社ごとに版型やフォントの種類・サイズなどが厳密に指定されている事により、譜面に個性が出るのである。

 

この話にピンと来ない方は、ぜひ楽譜売り場に行って、全く同じ曲でも出版社が異なれば、譜面の見た目の印象が違うということを体感してほしい。

ベートーヴェンモーツァルトピアノソナタだけでも十分だ。


再度話を「Finaleユーザーの集い2019」に戻そう。

 

後半は現在活躍されている作曲家や編曲家の方々によるトークセッションがあり、Finaleをどのように業務に活用されているかという事例が示された。

 

前述の通り、Finaleも浄書だけでなくサウンドメイキングの機能が充実してきており、DAWDigital Audio Workstation)を使わずともそこそこ立派な音が鳴らせるようになった。

 

彼らが実際にFinaleで作成した譜面が会場に映し出されたのだが、それはもはや浄書されているとは言えず、作曲のツールに特化されていた。

 

何が言いたいかというと、例えば16分音符など、隣りどうしの細かい音符がくっついていたり、スラーの形が成形されていないどころか他の記号類と交差していたりするなど、浄書屋からみれば「有り得ない」譜面なのであった。

 

ちょっと過激な表現を使ってしまったが、彼らをdisるつもりは全くない。

なぜなら彼らは作・編曲をしているのであって、浄書をしているわけではないのだから。

ただ、同じFinaleというアプリを使っているのに、こうもアプローチが違うのだという事に自分の理解が追いついていけなかった。

 

Finaleが浄書よりもサウンドメイキングに力を入れているのは、それを望むユーザーが多いのだろうか?

もし可能であれば、Finaleインストール時に施されるアンケートの内容(Finaleの使用目的等)の傾向を知りたい。

 

そして次のユーザーの集いがあるとしたら、トークセッションに楽譜出版社や浄書屋の方を含めて頂き、楽譜浄書にも力を入れているのだという姿勢を見せてくれると、浄書屋としても嬉しい限りである。